
進行度に応じて
を選択します。
早期がんに対しては、内視鏡的治療(内視鏡的粘膜下切除術;ESD)が適応になります。
内視鏡的治療の適応外の病期に対しては、術前化学療法と組み合わせた手術治療が標準治療となります。
近年は、低侵襲手術(胸腔鏡手術、ロボット支援手術)が普及し始めていますが、当科ではまだ低侵襲食道手術は導入しておらず、開胸手術を行っています。
食道がんは放射線化学療法も有効な選択肢であり、個々の患者さんの状態や希望に応じて治療法を決定します。
遠隔転移を有するような場合は手術適応外となり、化学療法が第一選択となります。

当科では低侵襲手術(腹腔鏡・ロボット手術)を積極的に行っており、比較的早期の病変に関しては機能温存手術(幽門保存・噴門側切除)にも対応しています。
👉 体への負担を最小限にしつつ根治性を追求

患者さんの全身状態や進行度などを考慮し、内科とも協議して治療方針を決定します。早期がんに対しては内視鏡的治療が適応になります。他臓器浸潤を有する進行がんを除き、低侵襲手術(腹腔鏡手術・ロボット支援手術)を行っております。
近年はロボット支援手術の件数が増えています。精密な手術が可能であることはもちろん、術後の痛みや体にかかる負担は非常に少なく早期回復が可能となり、早期退院が可能になるなど良好な成績が得られています。
スキルス胃がんや大きなリンパ節転移を有する場合には、術前化学療法後に手術を検討します。内視鏡的治療適応外の早期がんに対しては、幽門保存胃切除術や噴門側胃切除術などの機能温存手術を検討します。
術後の病理検査で病期を決定し、病期に応じて術後補助化学療法を検討します。根治的手術の適応がない場合でも、出血の予防や食事を摂取できるように手術を行った方が良い場合があります。



当科には大腸領域で内視鏡外科技術認定医を取得した医師が2名在籍しており、質の高い低侵襲手術を提供しています。低侵襲手術のみならず、他臓器を合併切除する拡大手術にも対応可能です。
👉 低侵襲かつ術後の生活の質まで考えた治療
予定手術の多くを低侵襲手術で行っています。最近では、ロボット支援手術が第一選択となりつつあります。とくに、難易度が高いとされる直腸がんでは、狭い空間(骨盤の中)で正確な操作が求められるため、ロボット支援下手術には大きなメリットがあります。
肛門に近い進行直腸癌では人工肛門造設が必要になりますが、根治性を落とさないという前提条件のもと、可能であれば患者さんの今後の生活を十分に考慮して肛門温存手術を検討します。
他臓器浸潤や遠隔転移を有する進行がんでは、化学療法を組み合わせて治療にあたります。肝転移や肺転移などの遠隔転移があっても、化学療法や手術(肝切除、肺切除)を行うことにより、根治を目指した治療が可能(肝臓がんの項目参照)になります。また、進行度に応じて術前・術後の化学療法が適応になります。
われわれの診療チームには、傷のケア・ストーマ管理・排泄ケア認定看護師も在籍しており、人工肛門造設後のアフターケアーも充実しています。


狭い骨盤の中で直腸と周囲組織の間を精密な操作により正確に剥離することが可能となります。
点線;直腸と周囲組織の間の剥離層

👉 出血が少ない精緻な手術により、術後平均入院期間は約1週間
👉 肝臓は低侵襲手術の恩恵が最も得られる領域
肝臓にできるがんには、「肝臓から直接できるがん(原発性肝がん)」と、「他の臓器から転移してくるがん(転移性肝がん)」があります。原発性肝がんの多くは「肝細胞がん」で、約9割を占めます。次に「肝内胆管がん」があり、その割合は少数です。一方で、大腸がんなど他の臓器にできたがんが血液の流れに乗って肝臓に移ることがあり、これを「転移性肝がん」といいます。それぞれ治療方針が異なるため、項目を分けて説明します。
肝臓の実質(肝細胞)から発生するがんです。近年は、抗肝炎ウイルス薬が進歩し、ウイルス性肝炎に伴う肝細胞がんの発生は減少しています。一方でその反面、アルコール(お酒)や糖尿病、肥満を原因とした脂肪肝(炎)による発癌が増えています。
肝硬変を中心とする慢性肝疾患を背景に発生しやすいため、がんの発見時には肝機能が低下していることが多いです。がんの大きさ、個数、部位、そして患者さんの肝機能を総合的に評価して、手術適応や治療方針を決定します。
肝細胞がんは、多発したり、再発しやすい疾患です。複数回の手術が必要になる場合もしばしばあります。患者さんにかかる負担が少なく、癒着の少ない腹腔鏡手術は非常に有用です。病態に応じて、肝臓の半分以上を切除する術式や血流支配に則った切除(*系統的肝切除)など複雑な高難度手術が必要となりますが、当科では腹腔鏡手術が可能です。
近年は、新規化学療法が発達し、進行がんに対しては化学療法を組み合わせて手術を行うこともあります。手術適応を満たす病期であれば、手術(肝切除術)が最も根治性の高い治療とされています。
手術以外にも、肝臓の病変を針で刺して焼灼する治療(ラジオ波焼灼療法;RFA; Radiofrequency ablation)や、がんを栄養する動脈内にカテーテルを挿入して抗癌剤や塞栓物質を注入する治療(肝動脈化学塞栓療法;TACE; Transarterial Chemoembolization)、重粒子線・陽子線を含む放射線治療などの代替治療があります。

*系統的肝切除
肝臓は、門脈や肝静脈などの血管の走行に沿って、いくつかの領域に分けられます。
系統的肝切除とは、その血管の支配に沿って、がんを含む領域をまとめて切除する手術です。
これにより、目に見えないがんの広がりも含めて、取り残しを少なくすることが期待されます。


肝臓の中にある胆管(胆汁の通り道)から発生するがんです。一般的に悪性度が高く、血管・胆管の支配領域に則った肝切除術(系統的肝切除術)が適応になります。
肝臓の中心部(肝門部)に進展・浸潤するような症例を除き、多くは腹腔鏡下に施行可能です。肝門部に浸潤・進展するような症例は、腹腔鏡下手術の適応にはならず、脈管(血管、胆管)の切除・再建を伴う大肝切除術が適応となります。
手術適応となるのは、主に大腸がんの転移です。大腸がんの転移は個数がいくつあっても、切除が可能であれば切除することで予後の改善が得られます。つまり、数がいくらあろうと、切除可能なら肝切除が第一選択となります。
少数の転移であれば、原発の大腸がんと同時に肝切除も並施することもあります。切除困難であれば化学療法を先行し、がんを縮小させてから切除(conversion手術といいます)する例も増加しています。
少数の転移であれば、胃がんや乳がん、卵巣がんの転移なども切除の適応となります。転移性肝がんは、一度切除しても再度肝転移を来すこともありますが、その場合には繰り返し切除を行うことで、根治が得られる例も存在します。
再肝切除を行う際には、できるだけ術後の癒着が少ない方が有利となるため、可能であれば腹腔鏡下肝切除を行います。転移個数や大きさ、部位に応じた治療戦略が重要になります。がんが巨大であろうと、多かろうと、決してあきらめない治療を行っています。




👉 豊富な経験と高度な技術により、他院では不能であっても当院では低侵襲手術が可能な場合、切除が可能な場合があります。
いつでもご相談ください。







膵臓がんは、最も悪性度が高いがんです。近年患者数は増加しており、2024年の統計では、がん死亡数の第3位(1位;肺がん、2位;大腸癌)となっています(※)。
従来は極めて予後不良ながんとして知られていましたが、近年では術前・術後の化学療法や放射線療法の進歩に加え、安全性の高い手術の発展により、治療成績は改善してきています。初診時に手術が困難な場合でも、抗がん剤治療を先行することで腫瘍が縮小し、手術が可能となることもあります。
当科では、消化器内科や放射線科と密に連携し、定期的なカンファレンスを通じて最適な治療方針を決定しています。
膵臓手術は侵襲が大きく、合併症のリスクも高いため、高度な専門技術を要します。当科では経験豊富なエキスパートが中心となり、精緻で安全性の高い手術を行っています。低侵襲手術も積極的に導入しており、国内外の先進施設と比較しても良好な成績を収めています。
ただし、最も重要なのは「安全にがんを切除すること」と「合併症を起こさないこと」です。術後の化学療法を確実に行うためにも、合併症を抑えた手術が不可欠です。低侵襲手術が常に最良とは限らず、安全性や根治性が損なわれる場合には適応としません。
そのようなコンセプトの上で、安全性と根治性を落とすことなく、術後の回復が早い低侵襲手術が可能であれば、患者さんにとって非常に有用です。低侵襲手術であれば、90歳を超える方にも十分施行可能な場合があります。当科では、外科医の都合ではなく、患者さん一人ひとりにとって最適な治療を提案しています。
※出典:国立がん研究センター がん情報サービス(最新統計)
膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN; Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm)

膵管内に粘液を産生する腫瘍で、前がん病変と考えられています。主膵管型や分枝型に分類され、がん化リスクが異なります。IPMNとは異なる部位に膵がんが新たに発生することもあるため、慎重な経過観察が必要です。
手術適応
治療方針
上記の手術適応を参考に、その他のがん化リスクも考慮して手術または定期的な画像フォローを行います。
粘液性嚢胞腫瘍 (MCN; Mucinous Cystic Neoplasm)

膵体尾部に好発する粘液を産生する嚢胞性腫瘍で、主に若年〜中年女性に多くみられます。前述のIPMNとは異なり、膵管とは交通しない腫瘍です。がん化のリスクがあるため、原則として手術適応となります。
漿液性嚢胞腫瘍(SCN; Serous Cystic Neoplasm)
漿液性嚢胞腫瘍(SCN)は、膵臓に発生する嚢胞性腫瘍の一つで、ほとんどが良性とされています。膵管とは交通せず、多数の小さな嚢胞が集まった蜂巣状(スポンジ様)の構造を呈するのが特徴です。
多くの場合は無症状で、検診や画像検査で偶然発見されます。典型的な画像所見を示す場合には、手術を行わず経過観察とすることが一般的です。
手術適応
以下のような場合には手術を検討します。
特に診断が明確でない場合には、悪性腫瘍との鑑別目的で手術を行うことがあります。

充実性偽乳頭状腫瘍 (SPN; Solid Pseudopapillary Neoplasm)
分化方向が不明な腫瘍として分類され、低悪性度腫瘍/悪性潜在能を有する腫瘍とされており、まれに悪性(がん化)例や転移例の報告もあります。若年女性に多い比較的まれな腫瘍です。手術により良好な予後が期待できるため、基本的に切除が推奨されます。
膵神経内分泌腫瘍 (NEN; Neuroendocrine Neoplasm)
膵神経内分泌腫瘍(NEN)は、ホルモンを産生する機能性腫瘍と、産生しない非機能性腫瘍に分類されます。機能性腫瘍では低血糖発作を起こすインスリノーマや、難治性潰瘍の原因となるガストリノーマなどがあり、症状を伴うため比較的小さくても手術が検討されます。一方、非機能性腫瘍は無症状で発見されることが多く、腫瘍径や増大傾向、悪性の可能性を考慮して治療方針を決定します。
機能性NEN
ホルモン過剰による特徴的な症状が出るのがポイントです。症状を伴うため、手術を積極的に検討します。
主な腫瘍
●インスリノーマ
機能性NENの中で最も頻度が高い腫瘍です。多くは良性であり、核出術(腫瘍のみをくり抜くように切除する術式)などの縮小手術で治療可能な場合があります。一方で、腫瘍の位置や数によっては、膵切除術などの定型的手術が必要となることもあります。
●ガストリノーマ
悪性であることが多く、一般的ながんと同様に切除術を行います。
●グルカゴノーマ
比較的まれな腫瘍で、診断時に進行していることが多く、悪性例が多いとされています。切除可能な場合には、がんと同様に外科的切除を行います。
●VIPoma
これらはまとめてWDHA症候群(Watery Diarrhea, Hypokalemia, Achlorhydria)と呼ばれます。
比較的まれな腫瘍で、悪性であることが多いとされています。大量の下痢による脱水や電解質異常が問題となるため、まず症状のコントロールを行い、切除可能な場合にはがんと同様に外科的切除を行います。
非機能性NEN
非機能性膵神経内分泌腫瘍は無症状で発見されることが多く、良性に近いものから癌と同様の悪性度の高いものまで存在します。腫瘍の大きさや増大傾向、悪性の可能性を考慮して治療方針を決定します。
一般的には2cm以上の腫瘍では手術が推奨されますが、2cm未満で増大傾向のない低悪性度腫瘍では、慎重な経過観察を行う場合もあります。腫瘍径、増殖速度、Ki-67(がんの増えるスピードの目安)などの悪性度指標に加え、画像所見や全身状態を総合的に評価し、手術適応を判断します。
手術適応
腎がんの膵転移
腎細胞がんから膵臓への転移は比較的まれですが、一定数認められます。腎細胞がんの術後発症まで長期間(数年〜十数年)経過した後に転移を来すことがあり、しばしば多発します。
切除により長期生存が期待できるため、切除が勧められます。
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)は、前がん病変・境界悪性病変とされており、がん化リスクや手術適応基準に応じて、手術または慎重な経過観察を行います。
MCNやSPNは若年から中年女性にみられることも多く、根治性・安全性を確保したうえで、整容性にも配慮した低侵襲手術が有用です。また、低悪性度病変に対しては脾臓を温存して低侵襲膵体尾部切除術を行うことも可能です。

👉 近年は進行度によっては、術前・術後化学療法と手術を組み合わせた集学的治療が行われます。
部位により術式が異なります。

胆道とは肝臓で生成された胆汁が排出される経路のことです。胆道がんは胆道の発生部位により、肝内胆管がん(前述)、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆嚢がん、乳頭部がんに分類されます。
肝門部領域胆管がんでは、肝外胆管切除を伴う大肝切除術が、遠位胆管がんや乳頭部がんに対しては膵頭十二指腸切除術が、胆嚢がんに対しては胆嚢全層切除術や肝切除術(必要に応じて肝外胆管切除)が行われます。
肝門部領域胆管がんでは、肝臓の広範囲を切除しなければならない場合が多く、手術後の残肝機能が問題になります。残肝機能を確保するために、術前にカテーテルを用いて切除予定の肝臓の血管(門脈)を閉塞させ、残る予定の肝臓を代償的に大きくする治療を併用することがあります(※)。
また、病気の広がりに応じて、肝臓と膵頭部を同時に切除する必要がある場合もあります。極めて侵襲の高い手術であるため、根治性と安全性を考慮してその適応は厳格に決定する必要があります。
胆道がんでは術後に補助化学療法を行うのが一般的です。また、胆道がんは膵癌に次いで悪性度が高いため、最近では病態に応じて術前に化学療法を一定期間行ってから手術を行うこともあります。
近年は、化学療法が進歩し、最初は切除不能であっても、がんが縮小した後に切除が可能となることもあります。
肝臓の手術前に、残る肝臓を大きくして安全性を高めるための治療です。
カテーテルを用いて、切除予定側の血管(門脈)を一時的に閉塞すると、切除する側の肝臓が萎縮し、残す側の肝臓が代償的に大きくなります。その後、十分に肝機能を確保したうえで手術を行います。

PTPEの実際


なぜ行うのか
👉 肝臓は体にとって非常に重要な臓器のため
👉 手術後に十分な肝機能を保つことが大切です
そのため、あらかじめ残る肝臓を大きくしておくことで、より安全に肝切除を行うことができます。
治療の流れ
一言でいうと
👉 「手術前に、残る肝臓を強くしておく準備治療」です
👉 高度炎症例でも腹腔鏡手術で対応可能です。



胆嚢は肝臓で作られた胆汁を一時的に貯めておき、食事に合わせて胆嚢が収縮することにより胆汁を排出します。胆汁は主に脂肪分の消化・吸収に関わる消化酵素です。
胆嚢内にはしばしば結石ができ、それを胆石と呼びます。胆石があっても無症状であれば手術は必要ありませんが、胆石が胆嚢の出口を塞いで、胆石発作(食後の疝痛)や胆嚢炎を起こすことがあり、そうなると手術適応となります。原則としてできるだけ早期に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。ほとんどの患者さんは、術後2〜3日程度で早期に退院されます。
胆嚢内でできた結石が総胆管に落石します(総胆管結石症)。これは、黄疸や胆管炎の原因になります。総胆管結石症に対する治療は、内視鏡的に十二指腸経由で切石されることが多く、その場合には、後日、胆石の原因である胆嚢摘出術が追加されます。すなわち、複数回の治療が必要になります。
外科手術で総胆管結石切石を腹腔鏡下に行うのは、通常の腹腔鏡下胆嚢摘出術と比較して高度な技術を要しますが、当科では病態に応じて、一期的に胆嚢摘出術と総胆管結石切石術を腹腔鏡下に行うことができます。消化器内科と連携しながら治療法を選択しています。



胆嚢ポリープの多くは良性であり、特にコレステロールポリープが大部分を占めます。しかしながら、一部には胆嚢がんとの鑑別が重要となる病変が含まれます。一般的に、ポリープ径が1cmを超える場合や、広基性・不整形など悪性(がん)を疑わせる形態を有する場合には、手術適応を検討します。
胆嚢腺筋腫症は、胆嚢粘膜が筋層内へ陥入し、Rokitansky-Aschoff洞(胆嚢の内側の粘膜が壁の中に入り込み、小さな袋状に広がったもの)の拡張を伴って嚢胞状変化や壁肥厚を呈する良性疾患です。多くは経過観察が可能ですが、限局性の壁肥厚や不整な形態を示す場合には、胆嚢がんとの鑑別が困難となることがあります。また、一部の形態ではがんのリスク因子となる可能性も指摘されています。
このように悪性(がん)が否定できない場合には、診断と治療を兼ねて腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。術前の画像診断で悪性(がん)が強く疑われる場合には、初回手術の段階から、がんであっても遺残させないことを目的とした術式(胆嚢全層切除術や胆嚢床切除など)を行います。
摘出した胆嚢は病理検査により最終診断を行います。術後に胆嚢がんと診断された場合には、進行度に応じて胆嚢床切除や肝切除、リンパ節郭清などを検討し、根治を目指した追加手術を行います。これらの追加手術も腹腔鏡手術が可能な場合があります。

👉 将来の発がんリスクを見据えた根治的治療
👉 当科では低侵襲手術により、根治性と体への負担軽減の両立を目指しています


膵胆管合流異常症は、胆管と膵管が本来とは異なる位置(十二指腸乳頭部の括約筋の作用が及ばない部位)で合流する先天的な異常です。これにより、膵液が胆管内へ逆流し、胆管粘膜に慢性的な障害を引き起こします。その結果、胆管の拡張(先天性胆道拡張症)や炎症を生じ、長期的には胆道がん(胆嚢がん・胆管がん)の発生リスクが高くなることが知られています。
先天性胆道拡張症は小児期に発見されることもありますが、近年では無症状のまま成人期に偶然発見されるケースも増えています。症状としては、腹痛、発熱(胆管炎)、黄疸などがみられますが、無症状で見つかることも少なくありません。発がんリスクを考慮し、無症状でも治療が必要となります。
胆管非拡張型では、特に胆嚢がんの発生リスクが高いため、胆嚢摘出術が基本となります。胆管拡張型では、胆嚢がんに加えて胆管がんのリスクも高いため、胆嚢と拡張した胆管をできる限り切除し、胆汁の流れを再建する手術(肝管空腸吻合)を行います。これは将来的な胆道がんの発生を予防するための根治的治療です。
当科では、安全性と根治性を最優先に術式を選択し、原則として低侵襲手術(腹腔鏡手術)によるアプローチを行っています。本疾患は高度な解剖理解と繊細な手術操作を要するため、専門的な経験を有するチームによる治療が重要です。若年女性に多い疾患であることから、低侵襲手術は整容性の面でも有用です。
術後も長期的なフォローアップが重要であり、定期的な画像検査などを行います。
胆嚢、肝外胆管切除後の再建

👉 低侵襲かつ根治性の高い治療で早期社会復帰
お腹の壁の弱い部分から腸などの臓器が押し出されて皮膚の下に脱出する病気をヘルニアといいます。多くは緊急性のない病気ですが、違和感や痛み、ふくらみが生じ、美容面で気になることもあります。根治には手術が必要です。
まれに腸管が腹壁の隙間に挟まって「嵌頓(かんとん)(※)」を起こすことがあり、腸閉塞や腸壊死につながるため、手術を含めた緊急的な対処が必要になります。

本来お腹の中にある腸などの臓器が、筋肉のすき間(ヘルニア門)から外に飛び出して挟まり、元に戻らなくなった状態です。腸閉塞を来たし、放置すると腸への血流が途絶え、壊死に至る危険があります。
初期であれば、医師がヘルニア部を圧迫することにより、用手的に戻すことが可能な場合もありますが、戻らない場合や時間が経過している場合は緊急手術が必要です。腸のダメージが強い場合には腸切除を行うことがあります。
👉 ふくらみが戻らない
👉 強い痛みがある
👉 吐き気・嘔吐を伴う
このような場合は、すぐに医療機関を受診してください。
足の付け根(鼠径部)に発生するヘルニアで、ヘルニアの中で最も頻度が高く、特に男性に多いのが特徴です。加齢や腹圧の上昇(重いものを持つ、慢性的な咳など)により発症しやすくなります。左右いずれにも発生し、両側に起こることもあります。
また、小児に発生するヘルニアの多くも鼠径ヘルニアです。

鼠径部のさらに下(大腿部)に発生するヘルニアで、女性に多いのが特徴です。ヘルニア門が狭いため、嵌頓を起こしやすく、緊急手術となることが比較的多い疾患です。
骨盤内に発生し、高齢やせ型女性に多いのが特徴です。閉鎖神経の圧迫により、太ももの内側に放散する痛み(Howship–Romberg徴候)を伴うことがあり、歩行時や足を伸ばしたときに痛みが強くなることがあります。
初期には軽い症状で経過することもありますが、進行すると腸閉塞を起こし、緊急手術が必要となることがあります。
過去の手術創部に発生するヘルニアで、創部の筋膜が弱くなることにより生じます。時間の経過とともに徐々に大きくなることがあり、症状や大きさに応じて手術を検討します。

へその部分に発生するヘルニアです。小児に多く、多くは自然に軽快しますが、成人では自然に治ることは少なく、手術が必要となる場合が多いです。肥満や妊娠、腹水などにより発症・増悪することがあります。
鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニアでは、腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP法)や前方アプローチ(鼠径部切開法)を行います。多くはメッシュを用いて再発を予防します。待機手術の場合、入院は術後2〜3日程度です。
当院では腹腔鏡下ヘルニア手術の技術認定医が在籍しており、安全で精密な手術が可能です。
腹壁瘢痕ヘルニアや臍ヘルニアでは、ヘルニアの大きさや状態に応じて開腹手術または腹腔鏡手術を選択します。
近年は、痛みが少なく再発率の低い腹腔鏡手術が主流となっています。


肛門のクッション(静脈の集まり)がうっ血して腫れた状態で、出血や脱出の原因となります。排便時のいきみや便秘などが主な原因です。
軽症な場合には、便通の改善や軟膏・坐薬などの保存的治療で症状の改善が期待できます。
内痔核に対しては、切らずに治療するALTA療法(内痔核硬化療法)も行っています。
一方で、出血を繰り返す場合や、脱出して戻らない場合、日常生活に支障をきたす場合には、結紮切除術などの手術治療を選択します。
👉 症状の程度に応じて最適な治療をご提案します
硬い便などにより肛門の皮膚が切れて生じる状態で、排便時の強い痛みや出血を伴います。
多くは保存的治療で改善しますが、慢性化すると潰瘍が深くなり、肛門狭窄をきたすことがあります。その場合には、手術により痛みの軽減と排便機能の改善が可能です。
👉 排便時の痛みが続く場合は早めの受診をおすすめします
肛門のまわりに膿がたまる病気で、赤く腫れて強い痛みを伴い、発熱することもあります。多くの場合、切開して膿を出す治療が必要です。放置すると痔瘻になることがあります。
肛門周囲膿瘍の後に、膿の通り道(瘻孔)が形成された状態で、慢性的に炎症を繰り返す病気です。自然に治ることは少なく、根治には手術が必要となります。
また、まれにクローン病などの炎症性腸疾患が背景にある場合があり、その際は消化器内科と連携して治療を行います。病状によっては複数回の治療や長期的な経過観察が必要となることがあります。
肛門から直腸が脱出する病気で、高齢の方に多くみられます。排便時に直腸が外に出てくる、便やガスが漏れる(便失禁)、残便感や違和感などの症状を伴うことがあります。進行すると常に脱出するようになることもあります。
治療は、肛門から脱出した直腸を切除・縫縮する経肛門手術(お腹を切らずに行う手術)や、腹腔鏡を用いて直腸を固定する手術があります。
根治性の観点では腹腔鏡手術が有利とされますが、年齢や全身状態を考慮し、体への負担が少ない経肛門手術も含めて最適な術式を選択します。
直腸脱

軽症では抗生剤による保存的治療を行いますが、中等症以上の場合や保存的治療で改善が乏しい場合、また虫垂根部に糞石(ふんせき:便のかすが固まってできた結石)を伴う場合には、手術を行います。
主に腹腔鏡手術で行っており、術後の回復が早く、多くは術後2〜5日間の入院です。
発症から時間が経過し、虫垂周囲に膿瘍(膿のたまり)を形成している場合には、いきなり手術を行うと盲腸を含めて広い範囲の腸管切除が必要となることがあります。そのため、まず抗生剤治療などの保存的治療で炎症を落ち着かせ、膿瘍が改善した後に、2〜3ヶ月ほど期間をあけて手術(interval appendectomy)を行うことがあります。これにより、腸管の広範囲切除を避け、虫垂切除のみで安全に手術を行うことが可能となります。

腸の通過が障害されることで発症し、腹痛、嘔吐、腹部膨満などの症状を呈します。
保存的治療で改善することもありますが、腸の血流障害を伴う腸閉塞(絞扼性腸閉塞)や、保存的治療で軽快しない場合、あるいは繰り返す場合には手術を行います。絞扼性腸閉塞は緊急手術が必要で、早期に手術を行い腸管壊死に至る前であれば、腸切除を回避できる可能性があります。一方、すでに腸管が壊死している場合には、壊死した腸管を切除する必要があります。早期診断と迅速な治療が重要です。
胃・十二指腸・小腸・大腸に穴があく病気で、原則として緊急手術が必要となります。原因として、胃・十二指腸潰瘍、魚骨などの異物、小腸の壊死、大腸癌や憩室炎などがあります。消化液や食物、腸内容が腹腔内に漏れ出すことで腹膜炎を引き起こし、重症化すると敗血症に至ることがあります。敗血症とは、感染が全身に広がり、臓器の働きが低下する重篤な状態をいいます。血圧低下や意識障害を伴うこともあり、迅速な治療が必要です。特に大腸穿孔では便が腹腔内に流出するため重篤となりやすく、命に関わる状態となることがあり、術後も集中治療が必要となります。
治療としては、穿孔部を縫合閉鎖する方法や、穿孔部を含む腸管を切除する方法があります。大腸穿孔では人工肛門を造設することが多く、全身状態の改善後に閉鎖可能となる場合もあります。