診療科・部門紹介

消化器外科

新型コロナウイルス感染から3年経ちクラスターも発生しましたが徐々に収束の気配は感じられます。
常勤医4人、専攻医1人、研修医1人、非常勤医3人、特定機能行為の資格看護師1人の体制で診療しています。総手術件数は506件、腹腔鏡下手術は282件と右肩上がりです。特に胆摘術は100例を超え、ヘルニアは94例、膵頭十二指腸切除(膵全摘含む)は15例と顕著で、胃癌、大腸癌ともに年々増加傾向です。新たに導入した腹腔鏡手術は、総胆管結石手術、噴門側胃切除、膵体尾部切除で、今後も増加が見込まれます(別表)。
緊急手術数は147件で救急車の応需件数の増加とともに増加し、重症例は救命科医のサポートを受けICU治療にあたっています。
診療部長の上田和光は主に上腹部外科(肝胆膵高度技能指導医、胃、食道)が専門で、特に高難度の肝胆膵手術や機能温存した胃切除を行い、subspecialityを希望する専攻医を募集中です。
診療科長・内視鏡外科センター長の岩崎喜実は主に下腹部・骨盤外科(結腸、直腸、肛門、ヘルニア)が専門で、日本内視鏡外科技術認定医(大腸部門)も取得しており腹腔鏡手術のみならず、ロボット手術も視野に入れ臨床に取り組んでいます。
上田、岩崎ともに各種学会の専門医・指導医の資格を持ち(別項)、臨床経験(緊急手術対応)のみならず後進の手術指導も豊富であります。定期的な術前後のカンファレンスや内科・放射線科・病理科を含めた集学的カンファを基に各患者さんに応じたきめ細かい治療を行っています。
菅野優貴の専門である腹腔鏡下ヘルニア手術 (TAPP)は翌日退院する患者さんがほとんどで満足度も高いです。腹腔鏡下胃切除、大腸手術だけでなく難度の高い胆石症も腹腔鏡で完遂できる技量を持ち、的確な画像診断をもとに後進の指導にも積極的です。
永井 健は日本消化器外科専門医を取得後、腹腔鏡下胃/大腸手術の経験数も増え、肝胆膵や緊急手術も積極的対応しています。また研修医や後進の直接的指導にも定評があります。
当院のモットーである“誠意を以って最善をつくす”の通り、茨城県南地域の中核病院を担うべく24時間、365日救急体制を敷き、臨床、研究、研修医への指導を積極的に行っています。

2022年度 消化器外科 手術件数

診療内容

肝臓疾患;主に肝腫瘍
肝細胞がん:近年の抗肝炎ウイルス薬の進歩で肝細胞がんの発生は減少しつつあります。 その反面、アルコール(お酒)や糖尿病、肥満を原因とした脂肪肝(炎)による発癌が増えており注意が必要です。治療は手術(Fig. 1巨大肝癌、Fig. 2尾状葉の肝癌)や、カテーテル治療(肝動脈塞栓療法)やラジオ波焼灼術、更には抗がん剤(分子標的薬)のおかげで生存率の上昇がみられています。
転移性肝腫瘍:主に大腸がんの転移が多く、原発の大腸がんと同時に肝切除したり、抗がん剤により腫瘍を縮小させて切除する例が増えています。
肝内胆管がん:肝臓内の胆管から発生する悪性腫 瘍で時に黄疸を発症します。  肝切除の術前には腫瘍の位置や切除する肝容積を測定するシュミレーションソフトを使用し 安全な手術を心がけています。(Fig. 3)

     

 

胆道疾患
胆石症:良性疾患の代表です。右上腹部痛・発熱が多い症状です。多くが腹腔鏡手術で術後3-5日で退院する方が多いです。
胆嚢ポリープ:大きさが1cmを超えると悪性の 可能性もあり手術した方が良い場合があります。 良性であれば腹腔鏡手術します。
胆嚢腺筋症:胆嚢の壁が部分的に肥厚する状態で 悪性との鑑別が困難な場合があります。
胆道がん;胆汁が流れる管(胆管)に発生するがんで、初期には症状が出にくく、進行すると黄疸が出やすいです。治療は開腹手術が主体ですが腫瘍の場所;胆嚢・肝外胆管・ファーター乳頭、により術式が異なります。特に肝門部胆管癌の場合は手術の前に門脈塞栓を行い、肝予備能と術式のバランスをとることが必要です (Fig. 4)

 

膵臓疾患;主に膵腫瘍
膵臓がん:最も悪性度が高い癌の一つです。一見手術が困難でも抗がん剤を先行し縮小してから手術する場合も多くなってきました。膵頭十二指腸切除術例が増えてきています。
粘液産生性膵嚢胞腫瘍(IPMN):膵臓の内部に嚢胞形成(粘液が貯留)する疾患で多くは良性で経過観察可能ですが、悪性の場合は切除を勧めます。
膵神経内分泌腫瘍:ホルモンを異常分泌することもある腫瘍です。大きくなると手術が必要です(Fig. 5)。

 

食道疾患;主に食道がん
早期癌でも内視鏡的粘膜下切除(ESD)が困難な場合は手術を選択します。主に右開胸・開腹、食道亜全摘、胸腔内吻合を行います。
進行癌の場合は、化学療法(抗がん剤治療)を先行し、その効果の具合で手術を検討します。

胃疾患;主に胃腫瘍
胃がん;早期の場合は腹腔鏡手術や残胃の機能を温存する手術を行っています(Fig. 6)。進行期の場合は開腹手術を優先することが多いですが、化学療法を先行する場合もあります。
胃GIST(消化管間質腫瘍);腫瘍の大きさや胃の発生部位により、腹腔鏡手術~開腹手術を選択します。多くは局所切除できる疾患です。

 

大腸疾患;主に結腸がん、直腸がん
早期から進行期まで約7割の大腸癌 (Fig. 7)を腹腔鏡手術で行っています。直腸癌や横行結腸癌にも腹腔鏡手術を適応しており、体への侵襲も少なく術後退院まで7-14日(平均10日)です。
切除不能大腸癌では抗がん剤加療が治療の中心となりますが、適応があれば緩和的外科治療(原発巣切除・消化管バイパス術・人工肛門造設術)も施行します。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)は薬物療法の発達のため、外科的治療適応例は少なくなってきていますが、難治例では外科的加療を行います。

 

肛門疾患;痔核・裂肛・肛門周囲膿瘍・痔瘻・直腸脱
痔核:痔核結紮切除術が治療の中心ですが、切らずに治療するALTA療法(内痔核硬化療法)も行い、早期の社会復帰が可能となっています。
直腸脱(膀胱脱・子宮脱合併例は除く)(Fig, 8):侵襲の比較的少ない経肛門的治療から根治性の高い腹腔鏡下直腸吊り上げ固定術を行います。

 

主な救急疾患
急性虫垂炎;主に腹腔鏡手術を行っており、多くは術後2~5日間の入院です。
腸閉塞(イレウス);保存的治療で軽快しない、あるいは繰り返す場合は手術を選択します。
消化管穿孔;近年、結腸憩室症の穿孔例が増加しています。大腸の穿孔は敗血症になり易く多くは重篤になり集中治療が必要です。胃潰瘍の穿孔の場合は手術でなく保存的に治ることも多いです。
消化管出血、肝外傷、膵外傷;状態により内視鏡的止血、血管造影下の止血を行いますが、止血困難な場合は手術を選択します。大動脈瘤が十二指腸へ交通した例や、慢性膵炎による膵液瘻で仮性動脈瘤の切除例があります。

医師スタッフ紹介

消化器外科診療部長

上田 和光(うえだ かずみつ)

【専門領域】

肝胆膵悪性腫瘍、胃癌に対する機能温存手術

【学位・学会認定】

医学博士

日本外科学会 専門医、指導医

日本消化器外科学会 専門医、指導医

日本肝胆膵外科学会 高度技能指導医、評議員

日本肝臓学会 専門医

日本消化器内視鏡学会 専門医

消化器がん治療認定医

難病指定医

消化器外科診療科長、内視鏡外科センター センター長

岩﨑 喜実(いわさき よしみ)

【専門領域】

腹腔鏡手術(小腸・大腸)、大腸悪性腫瘍、肛門外科

【学位・学会認定】

医学博士

日本外科学会 専門医、指導医

日本消化器外科学会 専門医、指導医

日本内視鏡外科技術認定医(大腸)

日本消化器病学会 専門医、指導医

日本消化器内視鏡学会 専門医、指導医

日本大腸肛門病学会 専門医、指導医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

消化器がん外科治療認定医

医員

菅野 優貴(かんの ゆうき)

【専門領域】

腹腔鏡手術、腹部救急疾患、ヘルニア手術、痔核治療

【学位・学会認定】

日本外科学会 専門医

日本消化器外科学会 専門医

日本消化器病学会 専門医

日本消化器内視鏡学会 専門医

日本腹部救急医学会 認定医

内痔核治療法研究会ジオン認定医

消化器がん外科治療認定医

医員

永井 健(ながい たけし)

【専門領域】

腹腔鏡手術、腹部救急疾患、肝胆膵外科

【学位・学会認定】

日本外科学会 専門医

日本消化器外科学会 専門医

日本がん治療認定医機構 認定医

臨床研修指導医

専攻医

水谷 久紀(みずたに ひさのり)

【専門領域】

消化器外科

【学位・学会認定】

専攻医(心臓血管外科志望)

河野 豪(こうの つよし)

【専門領域】

【学位・学会認定】

非常勤医

下田 貢(しもだ みつぎ)

【専門領域】

肝胆膵外科

【学位・学会認定】

医学博士

肝胆膵高度技能指導医

日本外科学会専門医 指導医

日本消化器外科学会専門医 指導医

日本膵臓学会指導医

日本消化器内視鏡学会専門医

消化器がん外科治療認定医

体育協会認定スポーツドクター

非常勤医

榎本 将也(えのもと まさや)

【専門領域】

【学位・学会認定】

日本消化器外科学会 専門医

日本消化器内視鏡学会 専門医