当科は1994年11月に開設以来、近隣地域の先生方、各診療科の先生方のご理解とご支援の元、診療内容を拡大し、つくば市および県西地域を中心とする循環器診療に従事してまいりました。2021年6月には大動脈血管内治療センターを併設し、大動脈低侵襲治療を強化。また2024年7月より更なる診療充実のため新体制での診療を開始いたしました。
心臓血管外科は文字通り「心臓と血管」の外科的治療(手術)を行う診療科です。「心臓と血管」は全身を扱いますので、心臓血管外科の治療は、循環器科、麻酔科、集中治療科、臨床工学士、専門的な知識と経験を持った看護職員、リハビリスタッフ等総合的な力が必要です。総合力なくして信頼される診療は成り立ちません。当科では、筑波記念病院の総合病院としての特性を生かし、手術困難な患者さんでも可能な限り良い術前状態で治療を行い、可能な限り早期の社会復帰に向けた治療を行っております。
また、心臓血管手術は手術のタイミングが非常に大切です。タイミングを逃さず治療を受けていただくことで、患者さんの今後の人生をよりよいものにできると考えています。当科スタッフは患者さんにとって「最適かつ最新な治療」を「一緒に考える」ことを大切にしています。
当科が診療に当たる疾患
成人の心臓、血管病変全般を治療対象としています。
虚血性心疾患 |
心臓に酸素や栄養を送る血管を冠動脈といいますが、その冠動脈が動脈硬化などで狭くなって(狭窄)酸素不足が生じると狭心症、さらに病状が進行し、心筋への酸素供給が途絶(閉塞)すると心筋梗塞となります。 未治療では命に関わりますので、まず循環器内科での内服薬投与やカテーテル治療を行います。重症の場合には冠動脈のバイパス術(新しく血管をつなぎ、血流を良くする)が必要になります。当科では人工心肺を用いない、心拍動下のバイパス手術を標準術式としています。 |
心臓弁膜症 | 心臓の中は4つの部屋に分かれており、それぞれの部屋の出入り口で扉の役割をする膜(弁)があります。この弁が壊れピッタリ閉まらなくなると逆流(閉鎖不全)を起こし、狭く(狭窄)なると血液の流れが悪くなります。逆流と狭窄が混在することもあります。症状は、全身倦怠感、下肢のむくみ、息切れ、胸痛、咳の持続(特に夜間)、不整脈(脈の乱れ)などです。進行すると心不全となり命に関わります。 手術では、自分の弁を温存し修復する方法(形成術)、あるいは人工弁に取り替える方法(弁置換術)を行います。また、状態により小さな傷で行うMICSも積極的に行っております。 |
大動脈疾患 (大動脈瘤、大動脈解離など) |
大動脈瘤は心臓から血液を送る大動脈の一部が異常に膨らんだ状態(瘤:コブ)を指します。通常は無症状で、大部分はCT検査などで偶然発見されます。大動脈瘤が破裂した場合、救命が極めて困難なため破裂する前の手術が必要です。当科では安全性、根治性を最優先に考え、ステントグラフト挿入術、人工血管置換術を選択しています。 また、つくば大動脈血管内治療センターでは先進的なステントグラフト治療を行っています。他院でステントグラフト治療困難と言われた方も気兼ねなくご相談ください。→詳しくはつくば大動脈血管内治療センターへ |
不整脈疾患 (心房細動など) |
不整脈による脳梗塞の予防には、ワーファリンなどの抗凝固薬(血をサラサラにする薬)を服用し血栓の予防を行いますが、抗凝固薬の服用が継続できない方や脳梗塞を繰り返す方を対象に、心臓内の血栓ができる部分(左心耳)を閉鎖もしくは切除する治療を行っています。 血栓ができるスペースをなくすことで、脳梗塞のリスクを下げることができる治療です。 |
閉塞性動脈硬化症 | 動脈硬化により動脈が閉塞してしまう病気です。しばらく歩くと、ふくらはぎやお尻がこわばるが少し休憩するとまた歩けるようになる方は足の動脈に狭窄、閉塞があるかもしれません。進行すると安静にしていても足がしびれ、痛くなり、さらには足の指や足部に潰瘍を形成し、切断が必要になることがあります。 当科では血管内治療(カテーテル治療)やバイパス手術を行っています。 |
下肢静脈瘤 | 下肢静脈瘤は静脈の流れが逆流することで起こります。命に関わる病気ではありませんがむくみ、だるさ、繰り返す皮膚炎、皮膚が黒ずみ硬くなってきている、潰瘍形成、こむら返りが気になる場合は超音波検査(エコー検査)で診断し、病状、必要に応じた治療を行います。 基本的には日帰り~2泊3日でラジオ波による焼灼術(レーザーも同様)、瘤切除を行っています。 |
心臓血管外科診療部長
由利 康一(ゆり こういち)
【専門領域】
成人心臓大血管外科、低侵襲治療
【学位・学会認定】
日本外科学会 外科専門医・指導医
心臓血管外科専門医認定機構 修練指導者
三学会構成心臓血管外科専門医認定機構 心臓血管外科専門医
日本脈管学会 脈管専門医
胸部・腹部大動脈ステントグラフト指導医
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)実施医・指導医
日本臨床外科学会 評議員
身体障害者指定医
つくば大動脈血管内治療センター センター長・心臓血管外科診療科長
西 智史(にし さとし)
【専門領域】
心臓血管外科、大動脈血管内治療
【学位・学会認定】
博士(医学)
心臓血管外科専門医認定機構 修練指導者
三学会構成心臓血管外科専門医認定機構 心臓血管外科専門医
日本外科学会 外科専門医・指導医
日本脈管学会 脈管専門医・研修指導医
日本血管外科学会 血管内治療認定医
胸部ステントグラフト指導医・実施医
腹部ステントグラフト指導医・実施医
浅大腿動脈ステントグラフト実施医
下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医・指導医
難病指定医
身体障害者指定医
医員
中村 宜由(なかむら のりゆき)
【専門領域】
心臓血管外科
【学位・学会認定】
下肢静脈瘤に対する血管内治療実施基準による実施医
血管診療技師
和田 英明(わだ ひであき)
【専門領域】
-
【学位・学会認定】
日本血管外科学会・日本脈管学会・日本静脈学会・日本動脈硬化学会 4学会構成血管診療 技師認定機構認定 血管診療技師
心臓血管外科コーディネーター
寺田 綾(てらだ あや)
【所属】
心臓血管外科
【問い合わせ】
電話 029-864-1212(代表) E-mail:cvs.coordinator@gmail.com
当院の心臓血管外科には当科専属のコーディネーターがおります。患者さまと当科医師の架け橋になるべく、より安心して患者さまが望まれる医療を受けられるようお手伝いいたします。 ご自身が今抱えられているご病気で何か疑問はございませんか? 症状や治療等、循環器疾患(心臓・血管)に関する医療相談をお受けいたします。心臓手術依頼につきましては早急にご対応させていただきます。